時おり耳にする“オパール=不幸、バッドラック”という図式。
一方、オパールの宝石言葉は“幸運”、あるいは“希望”。
まったく相反するこのことに対する事実は?
幸運? それとも不幸?
どっちなの??
今日来店されたイギリス人女性の口から出た一言。
「うちでは、昔からオパールは不幸をもたらすと言われてて、私もお祖父ちゃんに絶対オパールを身に着けちゃダメ、そう言われてきたわよ」
イギリスをはじめヨーロッパからいらっしゃる方の中で、時おり聞くことのある“オパール=不幸”説。
日本の方の中にも時おりいらっしゃいます。
オパールに係わるようになって約20年の間、私もこうしたオパールを否定するお話をいろいろ聞いてきました。
オパールは不幸をもたらす宝石なのでしょうか?
歴史を紐解いてみました。
そもそもオパールが歴史の舞台に登場したのは古代ローマ時代。
この時代には、“オパールとは全ての宝石を詰め込んだ宝物”という認識とともに、いたって肯定的な評判を持つ宝石だったようです。
時代は下って紀元7世紀頃には、オパールは魔法の石とされ、健康を保つ秘訣として珍重されていました。
その後、中世と呼ばれる時代には、オパールは“EYE STONE”と呼ばれ、視力回復や眼の病気を治癒したり、女性の髪の色が退色するのを防ぐ、そんな効能?を持つに至ったようです。
多くのフランス王室の宝飾品に使用され、ナポレオンが妻ジョセフィーヌに送ったオパール“The burning of Troy”はとても有名なお話です。
16世紀、かのシェークスピアがオパールのことを、“Miracle and Queen of Gems ”と書き記してもいます。
ここまでは、良い評判を保ってきたオパールですが、19世紀に入り少々風向きが変ってきます。
1829年に発刊された ウオルター・スコット卿の“Anne of Geierstein (ガイエルスタインのアン)”にオパールが登場したこと。
そして、オーストラリア産オパールが登場し、その魅力を潜在的な脅威とみなしたダイヤモンドディーラー達による、悪評、噂の流布。
このふたつをきっかけにして、“オパールは不幸をもたらす”という説がささやかれるようになっていきました。
後に、スコット卿の著作に登場するオパールに対する解釈は誤りであったことが判明し、名誉回復がなされていくのですが、一度傷ついてしまった評判は、100%回復することはできず、現在でも最初に登場したイギリス人のようなイメージを持っている方が残ってしまったのかもしれません。
もちろんオパールを扱う私のようなディーラーが、オパールのことを悪く言うはずが無い、と思われるのも当然です。
しかしここはちょっと考えてみてください!
これまでオパール採掘にたずさわってきた多くの人間が富を築き、中には不幸どころか最高の幸せを享受しているものも多くいるはずですし、私の知り合いにもいます。
“富”はあんまり築けてないですが、私自身もオパールと出会い、一般の方々よりオパールにドップリ浸かった生活をしてきて不幸になったか?
そうは感じません。
ダイヤモンドだろうと、他の宝石であろうと、人々にとって魅力のあるもの、惹きつけられるものに対して、様々な言い伝え、伝説、風評、噂はつきものです。
オパールよりもダイヤモンドの方がずっと多くの人間を不幸にしてきたと考えるのは贔屓目でしょうか?
そのイギリス人女性も、お祖父さんの言い伝えがあるにもかかわらず当店に入ってこられたのは、やはりオパールの魅力に惹かれてなのでは?
私自身にしろ、周りにいる人たちにしろ、オパールに係わってしまった唯一の不幸は、、、
その魅力から逃れられない、
そのことかもしれません。
今日は蒸し暑いゴールドコーストです。