とあるご婦人のお話です。
ある日の午後、ご年配の白人女性が、何か目的を持ったような足取りで当店へいらっしゃたところから、このお話は始まります。
決して健康そうには見えないこのご婦人、それでもオパールをご覧になる姿勢は真剣そのもの。
いろいろお話をお伺いし、どうやら近郊にお住まいの地元の方のよう。
口調も明るく、ブラックオパールのリングが欲しいこと、でもご主人には内緒のお買い物であること・・・
そんなことを少しずつ語ってくださいました。
お好みのオパールも見つかり、リングのデザインも決め、セッティングのためにしばらくお時間をいただいて、後ほどもう一度ご来店いただくことに。
2時間ほどおいて、もう一度ご来店いただき、リングの出来上がりにもご満足の様子。
その時から少しずつ本当の理由、ブラックオパールが欲しかった本当の理由を打ち明けてくださいました。
自分はがんに侵され、現在抗がん剤での治療を受けていること。
そのため、副作用がとても重く、なかなかベッドを離れることができないこと。
今日は久しぶりに体調が良かったので、以前から考えていた計画を実行したこと。
その計画とは、自分の子供たちに残していけるもの、自分に万が一のことがあったとき、形見として残せる、そんな宝石を手に入れるということでした。
決して悲観的でも悲しそうでもなく、淡々と語っていらっしゃるその姿、
“がんなのにタバコやめれないのよね”
なんて笑ってらっしゃる。
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どう思われますか?
がんの告知は当然のお国柄。
ご自身の病状もよく理解されているのでしょう。
その上で、子供たち、そして孫たちに何かを残したい、という気持ち。
価値のある宝石を買っておいてあげたい、というお気持ちなのか?
それとも、いつまでも自分を覚えていて欲しいという気持ちなのか?
そんなことを一度も考えたことの無い私にはわかりません。
さまざまな方々との出会いがあります。
そんな出会いの中の1ページでした。
今日は雲が大目のゴールドコーストです。