欲望渦巻く世界。
一攫千金
大もうけ
ダマセ!
ダマサレタやつが悪い!!
そんな山師が、宝石の世界にはいっぱい・・・・・
‘山師’
大辞林で意味をひいてみると、
鉱山の発掘や鉱脈の発見・鑑定をする人。
山林の伐採や立木の売買に従事する人。
そして、
投機的な事業で金儲けをたくらむ人。また、儲け話を持ちかけて他人を欺く人
そんな最後の意味での山師が、宝石の世界には跋扈しています。
お金の絡む世界
魑魅魍魎がうようよ。
何とかお金儲けをしよう。
とりあえず大金をつかもう。
そんな欲望のみがエネルギーになっている人間。
あのまま平凡な、本当に平凡な勤人をしていれば、絶対に遭遇しなかったであろう、そんな輩が、それこそ世界中からやって来ます。
先日、ふらっとお店にやって来た、40台くらいの男性。
着ているものも普通、物腰も普通、でも彼の口から出る言葉は普通じゃありませんでした。
「なかなか良いコレクションだね。それに天然ばかりだし」
そんな最初の一言で、彼が少しはオパールの知識を持っていることはわかりました。
品揃えをほめられてイヤな気がするはずもありません。
しばらく話をした後に彼が切り出したのが、
「ボルダーオパールのいいもの持ってるんだけど、興味ある?」
「どこのエリア?」
採れるエリアによって質が違うボルダーオパール、まずはその場所を確認するのはいつものことです。
「ちょっと言えないね。」
「秘密ってこと?」
「そう、そのとおり。でもライトニングリッジの奥のほうだよ。」
「まだ誰も掘っていない、新しいエリアを見つけたんだ。」
「出てくるのが全部層の厚い、赤の綺麗なものばっかり。」
「俺のオパールを全部マーケットに出したら、相場が下がっちゃうから、少し様子見てるんだ。」
「今は持ってきてないけど、興味があるんだったら名刺ちょうだい。こんど誰かに連絡させるから。」
「秘密の場所?面白いね。ぜひ見せてくれる。」
その時点で半分、いやいや8割がた気がついてしまった私には、そう言うことしかできません。
これまでの経験が、
‘こいつはいつものアレだよ’
そう語りかけてくるよう。
「機会があったら、是非、そのオパール見せて」
そう言われて、彼はうれしそうに店を出て行きました。
おそらく彼と会うことは、もう二度とないでしょう。
大きな話をして、その後実際にオパールを持って戻ってくる人間に、これまで会ったことがありません。
大きい話をする人ほど、それっきり。
何が彼ら、彼女たちをそうさせるのか?
私にその理由はわかりません。
一瞬だけでも自分を特別扱いしてもらいたいのか?
それとも特別扱いしたいのか?
オパールの仕入れはますます難しくなっています。
ずっと付き合っている鉱夫たち。
ある時は助けられ、そしてある時は手を貸す。
そんな関係から出来上がった信頼関係が、何とかこの商売を続ける原動力になっています。
山師?!
長く付き合える、本当の鉱夫たちは、もっとまじめで、家族思いで、ストイックで、オパールが好きで、
彼らは決して人をだまそうなどとは考えません。
そういう人たちでなければ、厳しい環境の中で、長い間土まみれになっていることなどできないのかもしれません。
一攫千金!
魅力的な言葉なのは間違いないとこ。
でも、
あんまり私には関係のない言葉であることも確かです。
人間っていろいろ、です。
雲が垂れ込め、寒さが厳しいゴールドコーストです。