昨日は紅葉についてお話をしました。
今日は、本職のオパールについてです。
「なぜオパールにはいろいろと色があるのか」
あらためて、お話ししてみましょう。
なぜ?
どうして?
オパールにはこれだけ色のバラエティがあるのか?
そしてなぜブラックオパールやボルダーオパールには 『 赤 』 が少ないのか?貴重なのか?
このブラックオパールを見てください。
中心部分の渦巻きと、それを囲む周囲の斑。
まったく違った色合いと表情。
なぜ、こんな違いが生まれるのか?
他の一般的な宝石とオパールの大きな違いは、オパールは結晶ではないということ。
いろいろな元素が、さまざまな形でしっかりと原子レベルで固まっているのが結晶です。
その結晶が集まってつくられたのがダイヤモンドやサファイアといった宝石たちです。
一方、二酸化ケイ素( SiO2 )とお水( H2O )、そして周りの環境からのさまざまな物質を含んだボールが集まったのがオパールです。
この図のように、オパールの中に入った光は、隣り合って並んだボールとボールの隙間に反射、拡散されて再び外へ、そして私たちの眼に色として認識されるのです。
このボールの大きさと並び方で、見せてくれる色や表情、そして遊色に個性が生まれます。
この図のように、ボールがバラバラ、サイズもいろいろ、不揃いで隙間があったりすると、上手く光を反射することができません。
そのようなオパールは色や遊色を見せない、『 コモンオパール 』と呼ばれる、美しくない名前だけのオパールとなってしまいます。
1センチ600万年と言われる、オパールの成長速度。
そんなゆっくりとした時間の中で、周囲の環境が落ち着いて安定していると、ボールもキレイに揃い、逆に不安定だと上の図のようにバラバラになってしまいます。
つまり、それぞれのオパールの遊色や表情は、そのオパールが経験した環境変化の結果なのです。
例えば、このブラックオパール。
真ん中に黒く走るポッチを挟んで、左右の表情が全く違います。
長い時間をかけてこのオパールが生成された過程の中で、左右どちらが始まりかはわかりませんが、何か周囲の環境の変化があり、こんな個性的な姿に創り上げられたのです。
ちなみに、中央を走る黒いポッチも、右下に見られる白い雲のような部分も、どちらも色のないオパールです。
この部分ができたそのころ、いったい何があったのでしょうか?
温度なのか? 圧力なのか? 何らかの地殻変動なのか?
思いをはせると、もうたまりません。
それぞれのオパールが持つ表情は、こうした環境変化の結果。
まさに自然が創り上げた偶然のたまもの、なのです。
さて、それではどうして 『 赤 』 が少ないのか?
それは、ボールのサイズに秘密があります。
キレイな赤い斑を生みだすためには、ボールのサイズが大きくないとならない。
これがその答えです。
ここでサイズが大きいと言っても、その単位はÅ(オングストローム)という極小の世界です。
こんな風に並んだオパールと、
こんな風にサイズの大きくなったオパールでは、見せてくれる色に違いが生まれます。
このボールの直径が 『 0.0003 mm 以上 』にならないと、赤色を見ることはできません。
そして、もちろんボールの粒やサイズがある程度規則的にそろっていないと、そもそも色を見せてくれないのはご説明した通りです。
つまり、0.0003 mm 以上のサイズまでキレイに成長するためには、安定した環境が長い時間続く必要があるのです。
ところが、数百万年、数千万年の時間の中で、自然はいろいろと変動・変化していきます。
結果として、小さなボールのオパールが多く、大きなボールのオパールは少なくなるのです。
小さいボール 紫
大きなボール 赤
その間に、青、緑、黄、オレンジなど、無限の色、色調が存在しています。
オパールひとつひとつの表情は、まさに地球の歴史。
こんな奇跡を見せてくれる自然は、やはり偉大です。
お楽しみください。。。