「オパールの価値を判断する決まり、統一された基準ってあるんですか?」
そんな風に、ご質問いただくことがあります。
「統一された基準はありません」
今は、そうお答えするしかありません。
これはオパールだけでなく、他の宝石にも当てはまることで、ダイヤモンドという特殊な例を除き、統一された価値基準は存在しません。
「それじゃ、どうやって価値を決めているの?」
素朴な疑問だと思います。
宝石それぞれのディーラーたちが、採掘状況やマーケットを見て価値、つまりお値段を決めている。
これが最もふさわしい答えではないでしょうか?
唯一、ライトニングリッジ産のブラックオパールだけは、業界団体が決めたシステムを基準とし、私たちもそれを用いています。
しかし、それも世界的に見ると、“ 統一基準 ” とは言えません。
オパールの場合、価値基準どころか分類方法、そして命名方法すら統一されていません。
特に最近は新しいタイプのオパールがマーケットに氾濫し、まさにオパール界は混乱の極みです。
Gemmological Association of Australia (GAA) が中心となり、ここ数年、オパールの分類、命名に関する統一基準作りに取り組んできました。
これには私たちもメンバーとなっている、Opal Association や Queensland Boulder Opal Association などの業界団体も賛同し、意見を取りまとめてきました。
そうした努力が少しずつ形になり、オパール分類法の原案が発表されました。
それによると、
- 8カテゴリーに分類する。
- それぞれのカテゴリー内を、地色(Body Tone)や 色調 / 色合い(Body Hue / Color)、あるいは透明感(Diaphaneity)などで細かく分類する。
となっています。
それを簡単にご紹介してみましょう。
カテゴリー1 Solid Opal:
カット、研磨以外の人的処理をされていない、ほぼ均一の化学的組成のオパール。
このカテゴリー内では、地色、そして色合い、あるいは透明感により9のタイプに細分しています。
例えば、地色が N1-N4(N5?)のものをブラックオパール(分類番号 1.1.1)、N5-N6のものをダークオパール(セミブラックオパール? 分類番号 1.1.2)、N7-N9をライトオパール(分類番号 1.1.3)とタイプ分け。
※ ?は原文に付いているものです。まだ決めきれていないところです。
また、透明感(透明度)によって、透明度の強いクリスタル(番号 1.3.1)から、不透明なオペーク(Opaque、1.3.4)まで4段階に分類しています。
カテゴリー2 Opal on host rock:
カット、研磨以外の人的処理をされていない、遊色を見せる母岩の付いたオパール。
このカテゴリーが “ on ” であり “ in ” でないところがポイントです。
つまり、母岩の中ではなく、上に乗っているということ。
このカテゴリー内では、母岩の種類、地色、色合い、そして透明感により13のタイプに細分しています。
例えば、母岩上のほぼ全面を覆っているタイプを Full Face(番号2.0.2)とし、母岩に囲まれているものを Nut(番号2.0.4)としています。
カテゴリー3 Opal in host rock:
カット、研磨以外の人的処理をされていない、遊色を見せる母岩の中に混入したオパール。
まさにマトリックスタイプのオパールのことです。
このカテゴリーも、母岩の種類、地色、色合い、そして透明感により11のタイプに細分しています。
カテゴリー4 Absorbent opal:
カット、研磨以外の人的処理をされていない、ほぼ均一の化学的組成で、吸水性を持ったオパール。
まさにエチオピア産に多くみられるハイドロフェンをさしているものです。
このカテゴリーは、その吸水性の度合い、母岩の種類、地色、色合い、そして透明感により11のタイプに細分しています。
カテゴリー5 Common opal:
カット、研磨以外の人的処理をされていない、ほぼ均一の化学的組成、あるいは母岩に着いた状態のオパールで、遊色を見せないオパール。
このカテゴリーも計12のタイプに分類されています。
カテゴリー6 Treated opal:
人的処理(染色、コーティング、充填など)がなされたオパール。
このBBQオパールのように、処理されたオパールで、処理方法により5タイプに分類しています。
カテゴリー7 Composite opal:
天然オパールを他のものに接着させたオパール。
これはもちろんトリプレットやダブレットなどをさしています。
こちらはさらに5タイプへ分類しています。
カテゴリー8 Artificial opal:
人工的に作られたオパール、あるいは成分的にオパールではないものを使った疑似オパール。
このカテゴリーには、合成オパールをはじめ、3のタイプに分類されています。
さてさて長くなってしまいましたが、いかがでしょうか?
まだまだツッコミどころ満載。
業界内からも、
ボルダーオパールは Solidって言えないの?
(Solid は天然という意味で、もちろんボルダーオパールにも長い間使われてきた言葉です。今回の分類法では、異なる母岩の付いたボルダーオパールは単一組成ではありませんのでカテゴリー1のSolid Opalには入りません)
とか、
ボルダーオパールはクイーンズランド産だけをさすの?
とか、
そしてもちろんいつも議論の中心になる、ブラックオパールを定義する地色の範囲。。。
まだまだ、まとまるまでに時間が必要そうです。
今年は参加できませんでしたが、先月ライトニングリッジで開催されたトレードショー中にも、各団体の代表が集まり、議論されたと思います。
もちろんオーストラリア国内でまとまったからと言って終わりではなく、次は各国の関係機関に持ちより、世界に広げていき、結果的に世界統一の分類、命名法としなければなりません。
気の遠くなることです。
それでも、業界全体の利益のため、エンドユーザーたる消費者のため、進めていかなければならない作業です。
皆さんのご意見も、是非お寄せください。
※ 詳しい分類法は、近日サイト上にてご紹介する予定です。
お盆休みに入った方も多いかと思います、天気は今ひとつですが、楽しい夏を満喫してください!
私はおとなしく実家でお盆の予定です。