『オーストラリアは世界最大のサファイア産出国である。』なんてこちらのサファイア鉱夫たちは自慢げに話します。これが統計的に正しいのかどうかは明確ではありませんが、主要な産出国であることは間違いありません。
これまでのオーストラリア産サファイアの一番のお得意さんはタイのバイヤー達でした。彼らはオーストラリアから原石をタイへ持ち込み、タイ産と名前を変えて販売しているのです(マダガスカル産のサファイアも同じような歴史をたどっています)。
オーストラリアで最初にサファイアが記録に登場するのは、1851年に金を採掘している際に偶然発見されたものです。引き続く1800年代後半は、主にロシアとドイツからの出稼ぎ労働者により、オーストラリアのサファイア採掘はたいへん盛んになりました。そうしたロシアの人々は、採掘されたものの中でも良質で大きなものロシアへ持ち帰り、皇帝に献上し、その見返りとして土地を与えられ市民権を認められたと言われています(ロシア王室の王冠や羽飾りに使われているサファイアの多くはオーストラリア産と言われています)。
こうしたオーストラリアサファイアの採掘ブームも、ロシアでの革命と戦争、そして大恐慌の影響で急速に縮小していきました。こうした低迷の時期を抜け出したのは、1970年代にタイのバイヤーたちがオーストラリアサファイアに目をつけたことがきっかけとなりました。
最近、オーストラリアサファイアの採掘者たちは過去を反省し、自分たちでオーストラリア産サファイアを世界中にプロモートしていこうとしはじめました。今後、タイ産サファイアが減少しオーストラリア産サファイアが増えていくのは間違いないことと思います。
オーストラリアでサファイアが採掘される場所は大きく分けて3ヵ所あります。
サーファーズ・パラダイスから約500キロ、南西に向かったニューサウスウエールズ州北部の産地で、ブラックオパールの故郷ライトニングリッジより東へ約300キロほど離れた場所です。主にブルー系のサファイアが産出されます。
サーファーズ・パラダイスから約1000キロ北西に向かったクイーンズランド州中央部の産地で、ブルー以外にもいろいろな色合い(ファンシーカラー)のサファイアが産出されます。
サーファーズ・パラダイスから約1800キロ、ケアンズから内陸へ300キロほど入ったクイーンズランド州北部の産地で、主にブルー系のサファイアが産出されます。
この3地区以外にも、小規模な採掘地はオーストラリアの東海岸に沿って点在します。
こうした代表的な鉱山のうち、その名も"サファイア(Sapphire)"という町を次にご紹介しましょう。